予定が崩れた日、「むしろ良き」が無理やりにならない順番
「むしろ良き」は強い言葉ですが、早く言いすぎると無理やりになります。イラッとしたと認め、どれくらい崩れたかを測り、崩れたおかげで生まれたものを探し、次の一手だけを決める六つの段階。

予約していた店が閉まっていて、乗るつもりだった電車は満席、週末はずっと雨だそうです。そんなとき誰かが「むしろ良き」と言うと、空気がふっと軽くなります。
でもこの言葉には、うまく効くときと、かえってイラッとさせるときがあります。違いは言葉そのものではなく、言うタイミングにあります。
予定が崩れた日に「むしろ良き」が無理やりにならないためには、通るべき順番があります。六つの段階に分けてみました。

「むしろ良き」は強い。でも順番があります
この言葉が好まれる理由ははっきりしています。起きてしまったことは元に戻せないから、せめて解釈だけでも自分の味方にしておく。崩れた状況を新しいチャンスとして見る姿勢は、実際に一日をあまり台無しにしません。
問題は、この言葉を早すぎるタイミングで出したときに起こります。予定が崩れた直後にすぐ「むしろ良き」と言うと、内心はまだ怒っているのに、表面だけ平気なふりをしている状態になります。この状態は長く続きません。一、二時間後に、関係のないところでイライラが爆発します。
だから「むしろ良き」は出発点ではなく、到着点に近いものです。そこまでたどり着く道があります。

まず、イラッとしたと認める
最初の段階は、意外なほど簡単です。イラッとしたら、イラッとしたと言うことです。
一か月前から楽しみにしていた予定が崩れて、何も感じないわけがありません。ここで感情を飛ばすと、そのあとの段階が全部ぐらつきます。無理に前向きに考えようとするほど、かえってイライラを握りしめてしまうからです。
認める方法は、大げさでなくてかまいません。
- 声に出して「あー、ほんとイラッとする」と一回言う
- 一緒にいる人に「ちょっとテンション下がった」と伝える
- メモに一行書く
一度外に出すと、感情の大きさが小さくなります。不思議なことに、認めた瞬間からイライラが抜け始めます。
ただし、感情を認めることと、感情を育て続けることは違います。誰のせいかを考え始めたり、同じ目にあった人の口コミを探して読みながら悔しさを積み上げたりすると、イライラは減るどころか増えていきます。一回言って、一回書いたら、そこで止めるのがいいです。

どれくらい「終わった」のか、大きさを測る
イライラが少し落ち着いたら、次の問いを立てます。「で、正確にはどれくらいダメになったんだろう?」
予定が崩れた直後は、すべてが台無しになったように感じます。でもひとつずつ確かめると、たいていは一部が崩れただけです。
- 戻せないもの:店が閉まっていた
- 代わりがきくもの:近くに別の店がある
- まだ無事なもの:一緒に行く人、空けておいた時間、行こうとしていた街
こうして分けて書いてみると、「終わった」が「夕飯のメニューがひとつ変わった」くらいに縮むことがよくあります。逆に本当に大きく崩れたことなら、それを正確に知るだけでも次の判断が楽になります。
時間を基準に測る方法もあります。このことは一週間後も気になるだろうか、明日の朝も気になるだろうか。たいていは明日の朝には「そんなこともあったね」という話のネタくらいになっています。
大きさを測らないと、小さなことで一日全体をあきらめてしまいます。

崩れたおかげで生まれたものを探す
ここでようやく「むしろ」を探す番です。無理にいいところをひねり出すのではなく、実際に生まれたものを探します。
予定が崩れると、たいてい三つのうちどれかが生まれます。
- 時間:移動や待ち時間がなくなった
- お金:予約金が返ってきた、使うはずだったお金が残った
- 選択肢:本来なら行かなかった場所に行く理由ができた
雨でお出かけが中止になったなら、後回しにしていた映画を観る時間ができたということです。電車が満席なら、もう一泊して、予定になかった街を歩いてみることもできます。
実際、長く記憶に残る旅や一日は、予定どおりに進んだ日よりも、一度崩れた日であることが多いものです。崩れた瞬間が、物語の始まりになるからです。

次の一手だけを決める
いいところまで見つけたら、次は動く番です。ここでよくある失敗は、一日全体を計画し直そうとすることです。
崩れた直後に新しい計画を完璧に立てようとすると、また頭がいっぱいになります。延々と検索して、結局何もできなくなる。
だから、次のひとつだけを決めます。
- 「とりあえず近くのカフェに入って考えよう」
- 「まずホテルに連絡して、一泊延ばせるか訊いてみよう」
- 「三十分だけ歩いて、目についたところに入ろう」
決めるのに制限時間をつけるのも役に立ちます。「十分以内に決めて、決まらなければいちばん近いところに行く」。選択肢が多いほど迷う時間は長くなりますが、予定が崩れた日には、いちばんいいものを選ぶより早く動くことのほうが大事です。
ひとつやってみると、その次は自然に見えてきます。落ち着きは、すべてをコントロールすることから生まれるのではありません。いまやることがひとつにまとまったときに生まれます。

ポジティブな妄想は、計画があるときだけ
最後の段階で、ようやく楽しい想像をしてもかまいません。「こうなったんだし、今日は新しいところに行ってみたら最高かも?」
ただし条件がひとつあります。次の一手を決めてからにすること。何も行動しないまま楽しい想像だけをすると、それは期待になり、期待はまた崩れることがあります。
人のことに、先に「むしろ良き」と言わない
この言葉には落とし穴がひとつあります。自分のことに使えば力になりますが、人のことに先に使うと傷つけます。
友だちが楽しみにしていたライブが中止になったと話しているのに、すぐ「むしろ良きじゃん、お金浮いたね」と言うと、友だちは慰められたというより、落ち込む権利を取り上げられた気持ちになります。さきほどの最初の段階、イラッとしたと認める過程を、横から飛ばさせてしまったわけです。
人のことなら、順番をこう変えます。
- まず「うわ、それは本当に残念だね」と言う
- 相手が十分に落ち込む時間を置く
- 相手が自分からいい面を探し始めたら、そこで相づちを打つ
「むしろ良き」は結局、本人が自分でたどり着く言葉です。横にいる人にできるのは、そこまでの道を急かさないことです。
予定が崩れても、一日まで崩れる必要はない
まとめると、順番はこうです。
- イラッとしたと認める
- どれくらい崩れたか、大きさを測る
- 崩れたおかげで生まれた時間・お金・選択肢を探す
- 次のひとつだけを決める
- そのあとで楽しい想像をする
- そして、そこで「むしろ良き」と言う
この順番を通って出てきた「むしろ良き」は、無理やりではありません。本当にそう思えるようになった言葉です。予定は崩れることがあっても、一日まで崩れる必要はありません。
この記事で使ったスタンプはキュービのむしろ良きシリーズです。むしろ良き、イラッとする、終わった、むしろ得した、落ち着いて、ポジティブ妄想まで、予定が崩れた日に気持ちが動く順番で構成しました。思いどおりにいかなかった旅行記や日常の記録を書くときに入れると、その日の浮き沈みがそのまま記事に残ります。